竹書房Z文庫

2007.04.17

『ドラグネット・ミラージュ2 10万ドルの恋人』

ドラグネット・ミラージュ 2
賀東 招二著 / 篠房 六郎イラスト
竹書房 (2007.3)
通常24時間以内に発送します。

 15年前、西大西洋に現れた「ミラージュ・ゲート」。その先に広がっていたのは、剣と魔法の支配する特異な世界───レト・セマーニだった。現代文明と魔法文明がぶつかる混沌のサンテレサ市でベテラン刑事マトバと美少女剣士ティラナは、特別風紀捜査官としてさまざまな難事件に立ち向かう! ファンタジックポリスアクション、待望の第2弾!

 続きはいつ出るのか、それ以前にちゃんと続刊は出るのかと結構失礼な待ち方をしておりました『ドラグネット・ミラージュ』。無事出ました今巻は、『First Night 忙しい夜』と『Need for Speed 10万ドルの恋人』の二本立て。
 仮死状態から蘇り街に逃げ出した吸血鬼と対決したり、ド派手なカーチェイスを繰り広げたり。ファンタジー的要素で一部着色されている以外は目新しいところのないベタベタにまっすぐなお話なのですが、マトバやティラナといったキャラの魅力で読ませてくれます。私はやっぱりトニーが一番好きかもしれない!

「そいつに権利をちゃんと聞かせるんだぞ。教えただろう」
「うむ。了解した」
 ティラナは大きく息を吸い込むと、大仰な声で捕らえた男に被疑者の権利を聞かせはじめた。
「よく聞け、地球人(ドリーニ)罪人(とがびと)よ。汝には沈黙を保つことも弁護人を雇うことも許されぬ。身を清め、ひざまずき、すべての罪を洗いざらい懺悔せよ。さもなくば大いなるルバーナ神の名の下に、怒りと裁きの(いかずち)が汝の頭上に落ちることであろう───」
「ぜんぜん違うじゃねえか!」

 マトバに認められようと頑張るティラナがとても可愛らしくて良いですね。このまま恋人というよりは相棒としての二人の関係を描いていってほしいものです。男女というよりは兄妹のような、色気のない関わり方がさっぱりとしていて、読んでて面白い。
 しかしマトバのあの鈍感さから考えると、ティラナとの間が恋愛方向に発展するには相当な転換点が必要だろうなー。

 それはそうと口絵折り返し部分で柑橘類を用いたパックをしているトニーの表情が素敵過ぎだと思うのですがどうでしょうか。
 マクロードになりきるトニーがいかにもプロッて感じでカッコ良かったよ…! これからもトニーに注目だね! 第3巻ではトニーを主役にした短編とかを是非…!(トニーを…!?)

 そして今巻もボーナストラックが素晴らしかった。それはもういっそ胡散くさいぐらいに。こういう遊びは大好きだなあ。

 次巻も、もちろん楽しみに読ませていただきたいと思います。
 次は一年以内に出るといいな!

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2006.08.22

『ドラグネット・ミラージュ』

ドラグネット・ミラージュ
賀東 招二原案 / きぬた さとし著 / 篠房 六郎イラスト
竹書房 (2006.1)
通常2-3日以内に発送します。

 超空間ゲート「ミラージュ・ゲート」によって、幻想世界レト・セマーニとつながった都市、サンテレサ市。そこでは新たな文明、新たな文化と共に持ち込まれた新たな犯罪と戦う刑事たちがいた───。
 同僚を殺されるきっかけとなった「妖精」を追う敏腕刑事のケイ・マトバは、同じく妖精を追ってやってきた異世界の騎士との合同捜査を命じられるが、やって来たのはうら若い少女騎士! 習慣の違いから対立する二人の捜査官は真相へとたどり着けるのか?! ファンタジックポリスアクション、ここに開演!

 Z文庫創刊当時、上記のあらすじとイラストに一目惚れして購入した作品です。

 ぶっきらぼうな中年刑事と負けず嫌いの少女騎士。
 妙な恋愛モードに突入することもなくスタンスはあくまで「相棒」として互いを信頼するに至るマトバとティラナの関係が、スタイリッシュな文章で描き込まれた良い作品でした。
 猫アレルギーなのに猫の世話をしてるマトバが可愛過ぎるよ。

 ストーリーそのものは古き良きお約束という感じで、それらしい人物がそれらしいところに配置されてそれらしい役割をこなす一直線なモノでしたが、そこに加えられたセマーニ世界のスパイスが素敵に効いてます。
 セマーニ人が扱うファルバーニ語の言い回しや単語についての言及、セマーニ人独特のちょっとした仕草、地球人(ドリーニ)との見解の相違、作品中に垣間見られるそう言ったこまごまとした一連の描写を、詳細な設定好きの私としては大変楽しく読ませていただきました。
 ファルバーニ語にはpの子音がないから『ポリス』が『ボリス』になるとか言うものすごく些細なポイントがツボだったりします。

 終盤、マトバが敵の本拠地にいよいよ乗り込んで行ってラストまでのアクションシーンの連続が非常にカッコ良くて実に爽快でした。
 ティラナとエルバジの一騎打ちの場面がすごく好き。
 マトバが最後の最後でゼラーダを撃つところも、何と言うか、綺麗にキマッてるな~って感じです。
 その後でようやく、ティラナが誘拐された妖精にこだわっていた理由が明かされるのですが、必要最低限の文章でさらりと語られるエピソードがかえってティラナの優しさや女の子らしいところを強く描き出しているようで、それも良かったです。

 全体的に語るところをきっちり語り省くところをきっちり省いた無駄のない小説でした。やや遊びが少ないかなと思わなくもありませんが、オニール神父が出て来たからまぁいいのかしら(苦笑)。

 そして『訳者あとがき』に満面の笑顔でサムズアップ。
 ということは次のエピソードは『緊急指令! ミラージュ特捜班出動せよ!』になるんですか…?
 トニー・マクビー刑事は活躍しますか…?!(そういうキャラに食いつかない)

 それはそうと続きを楽しみに待ちたいと思います。
 Z文庫は隔月刊だから感覚的になかなか続刊が出ないなぁ…。

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2006.08.15

『帝立愚連隊』

帝立愚連隊
帝立愚連隊
posted with 簡単リンクくん at 2006. 8.15
水城 正太郎著 / 有賀 ヒトシイラスト
竹書房 (2006.3)
通常2-3日以内に発送します。

「魔術」を使うものたちが自らの能力を駆使し、密かに国家の覇権をかけて争いを続けている時代───。赤木宗一郎は軍人一家に育ち、軍籍もあるにも関わらず、昼行灯を決め込む自由人。彼は古来より伝わる鉄砲術「大東流合気銃術」を体得しているが、それを役立てることもなく、日々を楽しく過ごしていた。しかし、怪人シリル・クロウリーの陰謀を目の当たりにし、それを阻止するために立ち上がる。ともに戦うは大刀使いの少女、不良メイド、傀儡使いの少女たち! はたして、彼らは帝都の危機を救うことができるのか!? 荒唐無稽、痛快無比の伝奇アクションがここに誕生!

 「荒唐無稽、痛快無比」の文句に惹かれ、とりあえずと買ってからあっと言う間に約半年。
 初読みの水城正太郎氏です。
 しかしながら何故かこの本よりも先に『東京タブロイドコレクション3紅い猟奇な星の使者』を表紙買いしていたという事実があります。『東京タブロイド』シリーズ他の本は一冊も持ってないのに! 読んだこともないのに! あまりに猟奇王がツボだったんです。いずれ読みたいとは思ってます。
 でも今は『帝立愚連隊』の感想です。

 うーん、上記のあらすじだとなんだかいかにも赤木宗一郎が主人公っぽい主人公みたいな印象を受けますが、実際は「大刀使いの少女」柳原風音(かざね)が進行役です。「不良メイド」鹿嶋瑠衣は風音の侍女なので宗一郎とのつながりは薄く、あんまり「ともに戦う」って感じじゃないですね。「傀儡使いの少女」八瀬柚奈(ゆずな)に至っては終盤になってからようやく登場して、活躍らしい活躍もしないままお話が終わってしまうことになるので、何だかなーってカンジですよ…。
 ってか宗一郎が軍人一家に育ったなんてどこに書いてあったんだろう…? 全然記憶に残ってないのですが…。

 あらすじはともかくとして、本編は全体的にオカルト色濃厚で、本格的な黒魔術とかそういう要素がお好きな方にはたまらない世界かと。
 場面ごとの描写もどっぷりと濃い目、戦闘シーンもたっぷりと描き込まれていて、物語の展開も適度に速く、きっちりと楽しませていただける面白い作品でした。
 それだけに、扱ってるパーツがとんでもないもの(人間城とか。うわーってなりましたよ)の割には、物語全体を通して振り返ってみたら案外無難だったという印象を否めません。

 悪役も色々突拍子もない存在だったのに結構あっさりやられちゃってたような。
 『鞍馬』なんか拍子抜けですし。そこでお兄ちゃんがその役目について美代ちゃんを守るのか! そうか! って思い込む間もなくそれはそれで終わっちゃったし。ええー。つか、たったそんだけのコトで駄目になっちゃうようなら全然役立たないじゃん…今後改善されるんですか…? ええー。

 宗一郎の正体についても結局よくわかりませんでしたしね。
 明らかに最初っから続編を想定して書かれてる物語に違いないのだから(ラストとかあからさまに「つづく」展開になってるんだし)第1巻なり上巻なり明記してもらいたかったです。
 続刊も出てないしタイトルがこんなだから一冊読み切りかと思ってたのでちょっとひっかかりました。

 それにしてもこれがシリーズ化するとなると最終的にはシリル・クロウリーを退治するんですか?
 …なんか、無理な気がするんだけど…。

 そういうわけで続きを待ちたいと思います。
 でもこの作品、戦争モノでもないのに人が死に過ぎだよね…なんか…。

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2006.05.12

『ウェイズ事件簿 暗き影は陽の下に』

ウェイズ事件簿
神代 創著 / 山本 ヤマトイラスト
竹書房 (2006.1)
通常2-3日以内に発送します。

 「よろず引き受けます───レヴァン・ウェイズ」
 皮肉屋で愛想知らず、昼行灯な優男レヴァンの営む「何でも屋」はトラブル解決を請け負う探偵業! ところが持ち込まれるのは浮気調査ばかり───。今日も今日とて、夫の挙動不審を訴える人妻にゲンナリのレヴァンだったが!?
 光と闇、火と水、風と土、木と石───8つの力のバランスは崩れ去り、ラドリア王国に禍々しい暗黒の魔手が迫る。ダークエルフや人狼の仲間達とともに陰謀に立ち向かうレヴァンは、街を、大切なひとを護りきれるのか!?

 古き良き時代の王道ファンタジー小説、といったところでしょうか。事件があって、それを解決するために、手がかりとなりそうな情報や解決に役立ちそうなアイテムを、各所を回って手に入れる。あとがきによるとこの作品、もともとはゲームのシナリオみたいなものとして使われる予定だったものだそうで、なるほど確かにRPGっぽい。と言うかRPGそのものです。RPGの筋立てをごくごく素直に文章に起こすとこうなるのだろうな、みたいな…?

 このハナシ、全体的に都合良く展開し過ぎじゃないのかしら…レヴは強いのか弱いのかイマイチよくわかんないし(多分強い)、仲間達もそれぞれに印象が薄くて、情報やアイテムを提供するだけの脇役も含めて全員でお互いの印象を薄め合ってるとしか思えない…。
 いや、キャラクターはたくさんいてもいいんですよ。私は多キャラ大好きだし。でもそれならそれで一人一人をもうちょっとハッキリと…一つのお話が短いんだから、その都度全員出すんじゃなくて…うーん…。
 全体的に不完全燃焼です。嫌いなタイプのお話ではないんですが、あまりにストレート過ぎるし、『お約束』をちょっと違った方向に解釈して使用してる気がします。具体的にどこがどうとは、言えないんですが…。

 この作品が初読みの作家さんですので、私個人に単純に合わなかったということなのでしょうね。
 もうすぐ第2巻が出るそうですが、買うかどうかは…ビミョー。
 山本ヤマト氏のイラストが好きなので買っても良いんですけど、絵師が山本ヤマト氏でなくても続刊を買うかと言われれば答えは必ずしもイエスではないので…。

 …それにしてもプロローグは一体何だったんだ?
 もしかして次の巻とか最後までちゃんと読まないとわかんないの…?

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