富士見ファンタジア文庫

2007.01.09

『ストレイト・ジャケット8 イケニエのロンリ ~THE SACRIFICE 2nd. HALF~』

イケニエのロンリ
榊 一郎著
富士見書房 (2006.4)
通常2-3日以内に発送します。

 トリスタンの町は<生け贄>を求めていた。<黒騎士>の噂と連続魔族化事件は町をパニックに陥らせ、正義の味方を名乗る暴徒たちで溢れていた。
「彼らのどちらかが<黒騎士>である可能性が高いと思われます」───何気ない口調で淡々と告げるカペルテータ。
 正義の味方なんてのは柄じゃない。
 連中が犯人だと決まったわけでもない。
 <黒騎士>を捕まえる義理もない。
「だけど、<生け贄>を当然だと思うその価値観は───気持ち悪いんだよ」
 生け贄を喰らってまで生きていたくないと思ったレイオット。その魂に青白い怒りの火がともる!
 榊一郎のハードボイルド・アクションファンタジー第八弾!!

 前巻『イケニエのヒツジ』から引き続き読んでおりますストジャです。こちらもひろ嬢にお借りしました。いつもありがとうひろ嬢。本人は私に貸したことはおろか自分が読んだことすら忘れておられました…。

 このお話の感想とはまったく関係がないのですが読んでる最中に気になって気になってしょうがなくなったことをここに記しておきたいと思います。
 ストジャに出て来るキャラクターって…ほとんど名前にラ行の文字が入ってる…!
 主人公のイオット・スタインバーグはもちろん。カペテータ・フェルナンデス、ネン・シモンズ、ブイアン・メノ・モデラート、フィシス・ムーグ、アフレッド・スタインウェイ、オ・ポロ・プロフェット、ン・コルグ…ジャックやエヴァは名前にラ行が入ってませんが姓がローランドだし(対象を姓の方まで広げれば100%になりかねない?)。
 カペちゃんの飼い猫のシャンやエナおばさん、ネリンさんの妹のナアちゃんにまでラ行の文字が入っているとなれば…こういう名前のつけ方をするのがこの世界の決まりごとか何かなのかと勘繰らざるを得ない。そういう設定がどっかにあったっけ…なかったよな…?
 カーとミュエナのメイスン兄妹や、ヴィクハト・ヤークトルーフにまで使われているのに気づいたが最後もうストジャ読んでる間中そのことが気になって気になって。確かに使いやすい音ではありますが何もここまで。ここまで使わなくても…!
 …そういえばポリ赤の登場人物もコーティカルテを筆頭にラ行の文字が入った名前が多かったな、というかむしろもしかして…とかいやなことに気づいてみる。いかん、考え出すとキリがない。

 気を取り直して感想を。
 今巻では前巻において引っ張るだけ引っ張りまくった黒騎士の正体が中盤くらいでようやくのこと明らかになり、黒騎士側の事情も色々とわかって、それではこれからバトル方面で色々盛り上がるのだろうなと思った途端、すんごくあっさりと黒騎士、やられちまいました。
 弱いよ…黒騎士、弱いよ…ッ! 人間を魔族化させる能力だけが厄介で黒騎士自体が弱かったのは想定外! ってかそこはレイオットさんがうまくやったからだってコトなんでしょうけどそれにしても…それにしても…ッ!
 確かにレイオットさんピンチにもなったけどそれ黒騎士相手じゃないし。魔族だし。どうなるのかと思ったらナイスタイミングで助け入るし。いいんだけど。いいんだけどさ…!

 前巻からギスギスした街の様子やら何かそういう雰囲気の重たいエピソードばかり続いていたので最後のバトルぐらいはスカッと決めて欲しかった、と思うのは私のわがままでしょうか。
 終盤に出て来たアルフレッドさんで満足しろと言うのか?(満足出来る性質のものなのか?) ところでレイオットさんとアルフレッドさんの確執って何だったんだっけ? まだ書かれてないよね…?

「レイオットが先程からずっと私を見ているので」
「ああ。実は君に恋してしまったのさ」
「…………」

「……実は以前から思っていたことですが」
 カペルテータは淡々と言った。
「何だい───我が愛しの君?」
「レイオットは冗句(ジョーク)というものがあまり上手くないのではありませんか」
「……お前に言われたらおしまいの様な気がするな。何となくだが」
「かもしれません」

 それにしてもレイオットさんのカペちゃんに対するガードっぷりは我が愛しの君どころじゃない溺愛加減に見えて仕方がありません。どこに行っても何をしててもさりげなくカペちゃんを守ってるレイオットさんがすごく素敵だった! あんな陰気臭い性格してるのにプリンの人と一緒に行動してるアルフレッドさんと同じくらい素敵だった!(我ながらたとえが理解出来ない!)(何でそんなにアルフレッドさんが好きなのさ!)

 何はともあれ、次の巻も楽しみに読ませていただきたいと思います!

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2007.01.05

『ストレイト・ジャケット7 イケニエのヒツジ ~THE SACRIFICE 1st. HALF~』

イケニエのヒツジ 7
榊 一郎著
富士見書房 (2006.3)
通常2-3日以内に発送します。

 トリスタン市では、魔法と関係のない人たちが、ある日突然魔族化するという謎の事件が頻発していた。
 「<黒騎士>に呪われると魔族になる」隣の人間がいつ魔族になるか解らないという緊張感から生まれた街の噂で、人々は静かに恐慌(パニック)状態に陥っていた。
 そんな中、深夜の街角でレイオットは異形のものに遭遇する。半人半馬。神話に出てくるケンタウロスのように、高貴さを持ちながらも魔族のような禍々しさを併せ持つ異形。
 まさかこれが<黒騎士>!? レイオットの前から一瞬にして姿を消した異形のもの。この時のレイオットはまだ知らなかった、この出会いが、彼を最悪の事件へ導くことになるのを───。
 榊一郎のハードボイルドファンタジー。人は皆、誰かの犠牲の上に生きている。

 おひさしぶりのストジャです。
 今回もひろ嬢にお借りしました、いつもありがとうございます。

 タイトルを見てもわかるように、今巻は上下巻構成の上巻にあたるもの。だからなのかどうなのか結構分厚い本なのに物語全体に関係するような大きな動きというものが見られません…。

 なんか魔法を使わない人間でも強制的に魔族にしちゃう黒騎士ってのが出て来ましたが、では黒騎士が何者なのかってのは結局わかんないし(裏で糸を引いてるっぽいのはもちろんプリンの人です)(プリンの人はよせ)、どうも今後の展開に絡んでくるっぽい二人組(救命魔法士の地味な兄と車椅子の美少女妹)も出て来ましたがこの二人が何なのかってのもよくわかんないし、紆余曲折あってレイオットさんが黒騎士と直接対決! ってなった途端『つづく』になっちゃったし…。

 いつ誰が魔族化するかわからないという不安に怯える人々が住まうトリスタン市の陰惨な雰囲気をお楽しみ下さいといった感じの内容でした。集団暴行とか多発してて大変。榊氏は同業者のいやがらせとか正義を振りかざす一般市民の私刑(リンチ)とかがお好みっぽい印象を受けました。

『忘れてませんよね?』
 念を押す口調でネリンがそう尋ねてくる。
 レイオットは更に数秒考えてから───言った。
「あんたの誕生日は来月だったよな?」
『覚えててくださって嬉しいです』
「となると……ジャックの誕生日か?」
『違います』
 ネリンの口調に苛立ちが滲む。
『先に言っておきますけど、モデラート警視の誕生日とかフィリシスの誕生日とかエリック君やフレッド君の誕生日でもないですからね』
「じゃあ誰の誕生日なんだ?」
『誕生日から離れてください』

 そんな中にあって「鉄壁の日常」と呼びたくなるほどにいつも通りなネリンさんが立派です。
 ストジャの登場人物は主人公のレイオットさんをはじめとしてそのほとんどがちょっと斜に構えたような、どっかヘンなヒトばかりなのでネリンさんやブライアン警視のまっとうな真面目さ加減が一服の清涼剤のごとく冴え渡るのです。

 というわけで、単なる栄養補給の手段としてドーナツ喰ってるブライアン警視とかロミリオさんに「面白いゲス」とか言われてるアルフレッドさんとか本筋に微妙に関係ないところばかりが記憶に残った上巻でした(それでいいのか…?)。

 引き続き、下巻を読み中です。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.10.06

『香住の中の10万人』

『香住の中の10万人 蓬莱学園-転校編』 新城十馬他

 蓬莱学園小説9冊目です。
 表題作を含む3作品収録の短編集になってます。

『香住の中の一〇万人』 賀東招二

 何だか最後の方がグダグダっぽいです。
 水越香住を探せじゃいけないのか、な?
 よくわからないお話でした。

『ふわふわしっぽ』 雑破業

 『騎馬っていこう!』で広海くんが怪我してた理由が語られたワケですが…。
 うーーーん………。
 魔神いないし…。

『11人いた!(笑) ~名探偵・知里しのぶの事件簿より~』 新城十馬

 兵衛の旦那が登場してくれたのが嬉しいです(声だけですが)。テオさんもいたし!(声だけですが)
 この二人が出てるっぽかったから一番最初に読んだのですが、『転校編』というお題に対するこじつけが無理矢理過ぎ。もはや意味がわかりません。

 ということで一通り読了致しました蓬莱学園小説。
 最終的な感想としては、一番はじめの『初恋!』がやっぱり一番面白かったと思います。『犯罪!』や『魔獣!』も良かったんですが、短編集になってからは…『ボパティーズ・パラダイス』以外は私にとってはさっぱりでしたね…。
 兵衛の旦那がどうやら新城氏の他の小説にも登場しているらしくて、そちらにも興味のあるところですが、とりあえずは一区切りです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

『騎馬っていこう!』

『騎馬っていこう! 蓬莱学園-部活編』 新城十馬他

 蓬莱学園小説8冊目(『革命!』は未完のため未読なので本当は9冊目らしいですが)。
 表題作を含む4作品収録(「問題篇」「解答篇」は合わせて1作品として)の短編集になってます。

『幽霊本塁打(ホームラン)一号【問題篇】 ~名探偵・知里しのぶの事件簿より~』
『幽霊本塁打一号【解答篇】 ~名探偵・知里しのぶの事件簿より~』 新城十馬

 前半部分と後半部分の二つに分かれて本の最初と最後に掲載されております、が、まず最初に通して読みました。食事のときは好きなものから食べてゆく主義…の反対です、悪しからず。
 「石と魚をつなげるとしたら、どんな単語を入れるべきでしょうか?」とか言われても全然わかんないし、「決まってんじゃない。『鳥』よ」とか言われても全然納得出来ません。探偵役に対する反発ばかりが募ってゆく悪循環です。私はなんでこんなに知里しのぶというキャラクターが嫌いなんだろう(苦笑)。

『奇跡の三・三・七拍子』
『正しい児童文学』 賀東招二

 結局、短編集ではこの方の作品が一番面白いです。
 前者はともかく後者は作中に出て来る言い回しが面白いだけなのかも…。

『騎馬っていこう!』 雑破業

 騎馬戦部の硬派な活動ぶりが青春してて良かったです。そうか、「不慮の卒業」って言い方になるのか(笑)。何でランプの魔神が出て来なきゃならないのか正直よくわかりませんが…。

 蓬莱学園小説、お次は『香住の中の10万人』です。
 『蓬莱学園の革命!』はすごーく面白そうなんですが未完のうえに続刊の目処も立ってないようなので、読もうかどうしようか迷い中。以前購入したはずなのですがどこにしまったのかわからなくなってるし…。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2006.03.09

『ドラゴンズ・ウィル』

『ドラゴンズ・ウィル』 榊一郎 富士見ファンタジア文庫

「魔竜スピノザ! お前を、倒すっ!」
 ………べしゃ。
 次の瞬間、自称『勇者の代理人』の少女は、見事にすっ転んでいた───。
 エチカ・ライプニッツは明るく元気な少女。聖<デルフォイ>の森に、スピノザという魔竜が棲むという噂を信じ、退治しにやって来た。
 街の人々は、誰もそんな噂を信じていない。馬鹿にされながらも、エチカは森の奥にある洞窟で、人類の天敵、魔竜スピノザを発見した!
 ところが邪悪な敵であるはずのスピノザは、香茶を愛す菜食主義の竜だった!?
 第九回ファンタジア長編小説大賞準入選受賞作! 元気な少女と風変わりな竜とのふれあいを描いた、心温まるロマンティック・ファンタジー登場!!

 かなり長らくひろ嬢からお借りしたままになっておりました本です。読み終わりました。何でもっと早く読んでなかったんだ私の馬鹿ッ!(自分に平手打ち)

 絶対最強生物であるところのドラゴンとまっすぐな性格の少女との淡い恋の物語です。軽い調子の導入部分から一転して『運命』や『役割』についての深いところを描き出す展開となり最後は堂々の…ま、ハッピーエンドでは、ありませんでしたけどね。そこがちと残念であり同時にだからこそそこが良いのかも。

 魔獣王であることを拒む竜、英雄であることを拒む勇者、自分に与えられた役割を拒否しあがく人々、自分の役割を自分で掴み取ろうとする主人公、エチカ。
 敵役についてのエピソードがもう少し欲しかったような気もしますが、全体的に隙なく構築されている世界は読んでて心地よくすっと入り込めました。かちっとした印象の文章の運びもデビュー作にして既に完成されてる印象で実に気持ち良い。

「生まれ変わりってのがあるなら、次は人間がいいな……って思ってたもんだからさ」
「そうなの?」
「うん」
「不便よ、人間は」
 エチカは溜め息をつく。
「空も飛べないし、竜に比べればひ弱だし」
「でも楽しそうだよ」
「そうかなー……私だったら、竜がいいな」
「邪悪な?」
 笑いながらスピノザが言う。
「んー……」
 エチカは人差し指を頬に当てて首を傾げた。
「訂正……スピノザみたいな、竜」
「…………」
 スピノザは何やら、落ち着かない様子で翼を少し開いたり畳んだりした。照れているのだとエチカが気づいたかどうか。
「じゃあ……僕ももう一回、竜をするかな」

 あああもうスピノザかーわーいいーよー!
 カッコ良いのは、アタラクシア。
 良い物語を読ませていただきました。
 最後の一行が痺れるほど、好きなのです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.07.30

『パーフェクト・ラブレター』

『パーフェクト・ラブレター 蓬莱学園-恋愛編』 新城十馬他

 蓬莱学園小説7冊目。
 表題作を含む3作品収録の短編集になってます。

『トキメキ以上、初恋未満』 雑破業
 主人公の男の子が最初の方で「わわっ☆」という台詞を発した瞬間本を壁に叩きつけたくなるも何とか読了。
 蓬莱学園を舞台にしておいて何故フツーの高校生の話を書こうとするのでしょうか…女の子もなんかムカつくキャラクターだし、ラストは消化不良だし…前のに続いてトップの作品が一番面白くないって構成は何とかしてほしい。

『ボパティーズ・パラダイス』 賀東招二
 この短編が読みたくて蓬莱学園シリーズを読み始めたのです、私は。
 黒人のマリオ君が一目惚れした少女に想いを告げるべく奮闘するごくごくオーソドックスなお話なのですが、随所にちりばめられた蓬莱っぽさが見事。ハーヴェイやオニール神父も良いキャラだし終盤は良い感じに盛り上がるし、最後はほのぼのハッピーエンド、上手いですね、言うことナシ。大好き。
 『初恋!』もそうでしたがこういうタイプの話が好きなのかしら私。男性が女性をおっかける話が(逆はどうだろう…)。

完璧な恋文(パーフェクト・ラブレター)』 新城十馬
 知里しのぶがますます嫌いになりました(うわー)。一人称の小説で主人公が嫌いになるって、致命的だよね…。
 筋はきちんと通ってますが何だかなあって感じのお話。

 一番読みたかった『ボパティーズ・パラダイス』を読んでしまったのでここらで蓬莱学園小説間を空けたいと思います。再開するときは『騎馬っていこう!』から。あるいはもう全部読んでしまった方が良いのでしょうか。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.07.22

『弁天女子寮攻防戦』

『弁天女子寮攻防戦』 新城十馬他 富士見ファンタジア文庫

 蓬莱学園小説6冊目。
 表題作を含む5作品収録の短編集になってます。

『冒険者求む!』 波多野とおる
 …蓬莱学園らしさもなければ蓬莱学園以外の小説とみても面白いところのない、何だかよくわからないお話でした。ページ数が制限されてるから書き込めてなくてそれでつまらないのか、それとももっと他のところに原因があるのかはよくわかりません…が…ま、まあいいや…。

『弁天女子寮攻防戦』 賀東招二
 蓬莱学園版『ダイ・ハード』。それ以上でもそれ以下でもなく。タフガイのマックレーンをオタクっぽい三宅八郎君に置き換えてもっぱら頭脳勝負をさせたところは興味深いのですが、結局は何から何まで『ダイ・ハード』。
 私はブルース大好きですし香田局長がちょっとだけですが出て来たのも嬉しかったので個人的には楽しく読ませていただきましたが、富士見ファンタジアのようなレーベルで発行される商業出版物に収録するに相応しい作品であるとは思えません。

『硝子壜の中から』 玖条正文
 ちょっと文章にクセがあるように思いましたが独特の雰囲気で面白かったです。角川ホラー文庫とかに収録されていたなら素直に楽しめたのですが…だんだん蓬莱学園が何なのか執筆者にどういう影響を与える枷なのかがわからなくなってきた…。

『卒業の条件』 一二三四郎
 非常に正統派な展開。それなりに面白かったです。

『南の島に、魔女の群れ』 新城十馬
 冒頭の千里しのぶと魚住笙のやりとりが何故だかよくわかりませんが非常に不愉快。読み進めるにつれマシにはなってきたけれど、千里しのぶってどうも私の嫌い系の女性キャラっぽいかもしれない。面白かったかと言われれば面白かったしつまんなかったのかと言われれば否定するにやぶさかではないけれども…というところで言葉を濁す。

 最初に読んだ『蓬莱学園の初恋!』が私にとってあまりに面白い小説だったためにどんどん評価が辛くなっている事実は否めないワケです。蓬莱学園シリーズの一気読みを始めたのは次の短編集に入っている『ボパティーズ・パラダイス』を読みたかったからでどうせならこの機会に買っておいたものの読んでなかった本達を読了しようと考えてのことだったのですが…ちょっとこの短編集で思いっ切り熱意をそがれてしまったかもしれない…。

 そんな中『市場に出された作品には、あらゆる批評を真正面から受け止める義務が生じるのですから。』というあとがきの一文には激しく同意いたします。この本の中で一番心を動かされたのがここだったと言う…。

 次の短編集は『パーフェクト・ラブレター』。終わりも近いので引き続き読んでみたいと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.07.18

『蓬莱学園の魔獣!』

『蓬莱学園の魔獣!上』
『蓬莱学園の魔獣!下』 新城十馬 富士見ファンタジア文庫

 学園非公認新聞<外套と短剣>編集主幹、テオドール・ザールウィッツは追われていた。学園を大混乱に陥らせた陰謀の張本人として。それは限りなく濡れ衣に近いものではあったが、事実は彼の苦難の助けにはなってくれない。金もなし、頼るべき仲間もなし、そんな彼が手に入れた最後のチャンス、とびっきりの特ダネとは?
 横倒しになった電車が写った一枚の写真───その胴体に穿たれた巨大な爪痕!
 蓬莱学園の秘境、南部密林に、何が潜んでいるというのか?
 生徒数10万の巨大学園に展開される、サイバーサスペンス第三弾!
(上巻あらすじ)

 蓬莱学園小説第3弾です。
 『犯罪!』にも出て来たテオさんが語り手で再登場。

 前々巻『初恋!』とも前巻『犯罪!』ともまったく異なる雰囲気を持つ作品です。
 これだけタイプの違う物語を同じ語り口で書き上げられる手腕には感心しますがシリーズが進むごとに『蓬莱学園』っぽい奇想天外さがおいてけぼりになっていってるような…それは単に私が『蓬莱学園』を誤解しているだけなのでしょうか。でも『魔獣!』の舞台だけは蓬莱学園でなくとも別に良かったような、それでもお話はちゃんと成立してしまうような…『蓬莱学園』を期待して読むとちょっとがっかりします。フツーの小説、って感じでしょうか。

 全編を通して明確なひとつの雰囲気が物語世界を支配しているのでその雰囲気を好きになれた方にはものすごく面白いお話と思えるはず。一本筋が通った構成には好感を覚えますが残念ながら私は『犯罪!』のラストでうやむやにされたことが結局こっちでもちゃんと語られなかったりそれどころか『魔獣!』の終わり方にさえもよくわからない部分がたくさんありすぎて純粋にストーリーを楽しむことが出来ませんでした。決していい加減に読んでいたりはしなかったのですが…単に私に合わなかっただけのことなのでしょうが…もしかして兵衛のダンナの出番が非常に少なかったせいなのか…(それかよ)。

 何にせよ『蓬莱学園』モノの長編小説は事実上『初恋!』『犯罪!』『魔獣!』の3作のみのようですので(『革命!』があるけれども未完、残りは全て短編集らしい)後に行くほど評価が落ちていってしまったのは非常に残念でした…。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.07.15

『蓬莱学園の犯罪!』

『蓬莱学園の犯罪!上』
『蓬莱学園の犯罪!下』 新城十馬 富士見ファンタジア文庫

 黄金生徒証。蓬莱学園10万人の生徒のうち、ほんのひと握りのものだけに与えられるという特別な生徒証。それはまさに、学園における富と名誉と権力の象徴に他ならない……と、同時に、持つ者の運命を狂わせ、災厄をもたらす───とも言われていた。
 野々宮雪乃の黄金生徒証をイカサマ博打で巻き上げたソーニャ・V・枯野。黄金生徒証がソーニャにもたらすものは、富か、権力か、それとも災厄か?
 『世界でもっとも危険な学園』に展開されるハイパーサスペンス第二弾!
(上巻あらすじ)

 蓬莱学園小説第2弾です。上下巻に分かれてはいますが一冊あたりは薄いです。

 物語は『初恋!』にて描かれた『朝比奈事件』後、生徒会選挙を休み明けに控えた蓬莱学園の夏期休暇中の出来事。野々宮雪乃嬢とソーニャ・V、黄金生徒証(ゴールド・カード)を巡る二人の女性(ソーニャは挿絵だけ見て男性だと思ってたよ…)の熾烈な争い。

 ひたすら一直線に走り抜けた『初恋!』とはまた違った意味で面白いお話です。登場人物の誰も彼もがそれぞれの思惑で行動していて、微妙なバランスで結末に向けて収束してゆくのが何とも。雪乃嬢とソーニャ・Vのお茶会のシーンとか良かったです。

 最後はどうなるんだろうとどきどきしながら読み進めて行くと小説としては有り得ないようなところで終わってしまっていてちょっと唖然としましたが…『魔獣!』が続編なんですね、じゃあこの後のことは『魔獣!』の方できちんと説明してくれるのでしょうか、雪乃嬢とソーニャがどうなったのか非常に気になるし八雲生徒会長だって大変なことになってそうだしそういった個人の問題を超えて蓬莱学園としても大変なことになってそうだし、まあそんな中兵衛の旦那はそれでも無事でいるでしょうが! だって兵衛の旦那だもん!(ええー)

 それにしても『犯罪!』は蓬莱学園のダークな部分に焦点を当てたような物語で、確かに面白かったんだけど私としてはちょっとなぁ…。蓬莱はもっとポジティブなお祭り騒ぎの場所というイメージがあるもので。テオドールさんの存在がなければもっと重たく暗くなっていたに違いないです。いいですね、気障なフェミニスト、しかも銃士隊。

 そんなテオさんは次巻『魔獣!』にも登場するご様子。
 引き続き『蓬莱学園の魔獣!』を読みたいと思います。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

2005.07.10

『蓬莱学園の初恋!』

『蓬莱学園の初恋!』 新城十馬 富士見ファンタジア文庫

 蓬莱学園!
 東京から2500キロ、南洋に浮かぶ宇津帆島。島ひとつがまるごと学校になっていると思ってくれればいい。海と山、港に飛行場、原発に謎の怪獣……そして10万人の生徒たち! 一筋縄じゃいかない連中ばかり、一触即発の青春無法地帯。
 春4月、新入生の朝比奈純一は、学園遊覧の飛行船から覗いた双眼鏡に映った少女に一目惚れ。
「あの娘を見つけるんだ!」
 不屈の情熱(だけ)を武器に、初恋の君を追う純一が巻き起こす、前代未聞のノンストップ・スラップスティックアクション!

 あらすじの通りの内容です、生徒数10万人の超巨大学園蓬莱学園にて、クラスや学年どころか名前さえもわからない一人の少女を探し求める朝比奈純一君が巻き起こす大騒動。あの娘に会いたい、声をかけて仲良くなりたいという彼の思いはどこまでも一直線でひたむきで誰にも止められなくて、読んでてとても清々しい。蓬莱学園ならではの行き過ぎ感がとても良い。

 とは言ってもただ単に根性だけがウリの熱血バカではない朝比奈君、公安委員のベアトリス香沼や一応巡回班士の神酒坂(みわさか)兵衛(ひょうえ)といった蓬莱学園のセンパイ達をちゃっかりしっかり利用しつつのしたたかさが小気味良くもあり。

 全編がハイペースながらもテンポ良く展開して行き着く先は蓬莱学園全体を揺るがす怒涛のクライマックス。ラストの締め方も秀逸です。面白かった! 面白かったー!

 もともとが何でもアリな学校という『蓬莱学園』の世界観が大好きだったこともあり、すっかりのめり込んで一気に読み終えてしまいました。けれども蓬莱を知らない方にもこの本を手に取る機会があれば是非読んでいただきたい面白さですよ。『蓬莱学園』を小説にしたものは富士見ファンタジア文庫から何冊か出ていて、最後に出版された『蓬莱学園の革命!』が未完のまま止まってしまっているようなのでそれ以外の作品を持っていながらも読み始めるのをためらっていたのですが…もう、シリーズが未完でもいいや、読んでしまおう!

 キャラクターの中では何気に腕の立つ兵衛のアニキがやっぱり大好きですね~。銃士隊より巡回班の方がやっぱり好きだ!(笑)

| | Comments (0) | TrackBack (0)